傷あと-慶應義塾大学病院形成外科

傷あと
  • 乳房再建
  • 悪性腫瘍切除後再建
  • 顔面神経麻痺
  • 傷あと
  • ケロイド・肥厚性瘢痕
  • 顔面骨骨折
  • 褥瘡・難治性潰瘍
  • 頭蓋骨・顔面骨の変形
  • 口唇裂・口蓋裂
  • あざ・血管腫
  • 眼、鼻、耳など顔の変形
  • 眼のまわりの形成外科
  • リンパ浮腫
  • 患者の皆様へ

傷あととは?

大きなやけどや事故に限らず、ちょっとした切り傷でも、皮膚に傷が出来ると、必ず傷あとが残ります。大きな傷あとは、まず手術により取り除いたり、範囲が広い場合は、植皮術や皮弁形成術などを用いて手術を行い、治す必要があります。大きな傷あとを手術以外の方法で、目立たなくする方法は現在のところ存在しません。

一方で、他の手術の線状の傷あとや、形成外科的に縫合したきれいな傷あとでも、場所によっては、非常に気になることもあります。私たちは、傷を完全に消し去ることを目標に臨床と研究を行っています。
そもそも傷あととはなんなのでしょうか?なぜ傷あとは傷あととして認識されるのでしょうか?傷あとを目立ちにくくするための研究を行っている施設は世界中に数多くありますが、残念ながら未だ傷あとを跡形なく、まったく元通りの皮膚にまで再生することに成功している研究施設はありません。

傷のない正常な皮膚と比べて傷あとは以下の点で違います。

1) 皮膚の“きめ”がなくなっているか乱れている。
2) 毛や汗腺など皮膚付属器が無くなっている。
3) 色素沈着または色素脱失を起こしている。
4) 毛細血管が増えている。
5) 隆起または陥凹している。

このような、傷あとの特徴を知り、それぞれを元通りにすることができれば、元通りの皮膚に戻すことが可能です。
上の、3)のうち色素沈着は、皮膚の色素細胞が、過剰に色素を作っている状態です。これと、4)は様々なレーザー治療や軟膏療法で軽快させることができます。当形成外科には、各種レーザーを取り揃えていますので、これらを駆使して、色調の治療を行っています。5)は、手術で修正することで軽快させることができます。
傷あとを跡形なく再生させるためには、1)と2)が最後のハードルとなっています。これには、今後の細胞治療を基にした、再生医療による治療を用いないと最終的には解決しないだろうと考えられています。

このような再生医療を用いた皮膚の再生は、動物を使った研究の分野ではうまくいっていますが、人で実際に臨床応用を行う事は、安全性の検討の必要性から今しばらくお待ちいただかないとなりません。しかし、これまでの形成外科の手技の進化と、それに加えて私たちは動物を用いた傷あとの研究から得ることができた様々なアイディアで、現在行うことができる手術手技に反映させることで、従来治らなかったような傷痕を目立ちにくくすることに成功しています。

どんな傷痕を目立ちにくくすることができるか?

顔面・頭の傷あと、手術後の傷あと、熱傷・外傷後の傷あと、リストカット後の傷あと

体質や、体の場所によっては、傷あとは異常に隆起、拡大しケロイドや肥厚性瘢痕といった状態になることがあります。これは、正常な傷あとというよりは、病的な状態ですので、別の「ケロイド・肥厚性瘢痕」の項で、詳細に記載しておりますので、ご参照ください。

どのような方法で傷あとを治すか?

手術方法には、下記のものがあります。

切除術・分割切除術

幅の広い傷あとや、隆起あるいは陥凹している傷あとに対して、切り取って特殊な方法で縫合します。一度で縫合できないぐらい幅が広い傷あとは、初回手術後に半年以上経過してから繰り返して切除する分割切除術を行うことで、縫い縮めることが可能です。一番単純で侵襲も少ない方法です。

植皮術・皮弁形成術

幅の広い傷あとや、切除縫合ではゆがみが来る場所(目や口の周囲など)に適しています。他の場所から組織を移行しますので、パッチワーク状の色調の変化が残存することがあります。

組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)

分割切除術に似ていますが、手術で皮膚の下にシリコンでできた水風船を埋め込みます。その後に、2−3か月かけて水風船を膨らまし、皮膚を伸ばしてゆき、この伸びた皮膚を用いて切除した傷あとの部分の補填に使います。

チップスキングラフト

幅が広いけれど、柔らかい傷あとや色素脱失を起こしている傷に使います。傷あとの表面を器械を使って削りとり、ここに正常な皮膚から採取した薄い皮膚を細かな粒になるまで切り刻み、傷あとの上に植えます。質感の改善に効果があります。

頭の傷あと(禿創)

毛髪がある部分に傷ができると、傷あとの中には毛がほとんど生えてきません。傷あとを切り取って縫合しても、皮膚の緊張で傷あとが徐々に広がり、また目立った傷あとになってしまうことがよくあります。私たちは、創縁にかかる緊張をできるだけ少なくする方法、傷あとの中に毛包を誘導する方法、さらに自毛植毛を組み合わせることで、頭の傷あとに関しては最終的にほとんどわからない状態にまで治すことに成功しています。

レーザー治療

色素沈着を起している場合には、Qスイッチルビーレーザー治療と軟膏療法、微細な血管の拡張のため、発赤している場合は色素レーザー治療を併用しています。

傷あとは、このように様々な要素の組み合わせで、見た目でわかる「傷あと」になります。当形成外科では、いろいろな傷あとに対応し、できるだけ正常の皮膚に近づける方法を提示し、治療を行っています。

担当:貴志和生(外来:月曜日、金曜日) 清水瑠加(外来:月曜日)

© 2011 Keio University Hospital